友達最終日






朝練を終えると、昇降口の手前で、跡部くん達男子テニス部と一緒になる。
一緒って言っても、彼らの数メートル後ろを歩いているだけで、何か話をするわけじゃないんだけど。
女テニの方が少し早くあがるのに、いつも着替えにもたついて、その結果この時間になるだけで。
それでも、このわずかな時間が、私にはとても大切な時間なの。

予鈴が鳴る廊下を進み、二階の一番端まで歩いて行く。
同じA組の教室へ入ると、机ふたつを挟んだ向こうに、跡部くんの横顔が見える。
挨拶が飛び交う中心で、今日も変わりなく、その笑顔は光っていた。


クラスメイトになったのは初めてだけど、三年続けたテニスのおかげで、会話ぐらいはできるようになった。
レギュラーになかなか手が届かない私に、スイング時の欠点を指摘してくれた跡部くん。
誰も言ってくれないようなことなのに、補欠部員の私に、あの跡部くんがって・・・・・
だからしょうがないの、好きにならずには、いられなかった。



大会出場のレギュラー決定に向けて、来週、部内で選考試合がある。
これが中等部で最後の大会だから、せめて一度でいい、大きな舞台に立ってみたい。
跡部くんのように、華やかに勝利することは難しいけど、何か結果を残せたら、少しだけ近づけるような気がしている。


休み時間、私は右手人差し指の爪をせっせと整えていた。
少しひびが入ってしまって、先の方は、すでに二ミリほど割れている。
深爪を気にしながらギリギリまでカットして、これ以上割れないように、指先とにらめっこしている時だった。


「切るより、ヤスリの方がいいぞ」
「あ・・・」
「持ってねぇのか?」
「うん・・・」
「しょうがねぇな、貸してやるからこれを使え」


内ポケットに手を入れて、小さなケースを取り出す跡部くん。
私はそこにいたこと自体に驚いて、出されたケースの開け方さえわからず。


「えーと・・・」
「指、見せてみろ」


前の席に腰を下ろすと、ヤスリを手に、早速私の爪を研ぎ始める。
初めて触れた指、こんな近くにいる跡部くんを見るのも、きっと初めてだ。

長いまつ毛、目元のホクロ・・・・・
気づかれそうで下を向くと、跡部くんが私の爪先を撫で、研ぎ具合を見てくれている。
擦り傷とかいっぱいあって、綺麗な手じゃないことを、今日ほど後悔したことはない。


「あの・・・ありが、とう」
「このひび、気をつけねぇと、パックリ剥がれるぞ」
「っえ、剥がれる・・・」
「透明なマニキュアでも塗っておけ。予防になる。  来週、選考試合だろ?」
「あ、うん・・・・・」
「勝てよ」
「・・・・・」
「じゃあな」


跡部くん、試合があること、知ってるんだ。
男子テニス部とはコートも違うし、練習もミーティングも全て別。
成績も部員数もこじんまりしている女子テニスは、氷帝の中では地味な存在。
三年の私が、そこでレギュラーを取れないのは、それだけ下手だってことなんだ・・・・・

試合、勝ちたいな。
跡部くんに言われたからか、余計にそう思う。
研いでくれた爪先。 指でなぞるとつるつるして、引っかかるところもない。
試合、どうしても勝ちたいな。
今日の帰り、マニキュアを買って帰ろう。




朝練と自主練と、部活とまた自主練と。
ピカピカ光る人差し指が、私に力を与えてくれる。

薄いピンク色のマニキュアで、小さく書いたAの文字。
上からまた透明のを塗って、そのイニシャルを隠すように覆ってみた。
こっそり見つめては、ぎゅっとラケットを握り深呼吸。

同じ氷帝のジャージを着られる、最後の大会が待っている。
私、絶対に勝つからね、跡部くん。




選考試合の前日、各教室では学力テスト。
忘れていたわけじゃないけど、時間のほとんどを練習に使っていたせいか、結果が不安な出来。
それでもなんとか終わったから、両手を上げ、大きく伸びをして。
たまたま目が合った跡部くんに笑われ、恥ずかしさで火が出そうだった。


「帰り暇なヤツは、うちでお茶でも飲んで行くか? ご馳走するぜ」


跡部くんがそう声を掛けると、教室に歓声が沸き起こる。
さっきまで暗かった雰囲気が、一瞬にしてお祭り騒ぎ。
駆け寄るみんなの背中で、跡部くんの姿はすっかり見えなくなっていた。


去年同じクラスだった子に聞いたことがある。
何か行事があった時、放課後跡部くんのおうちでパーティーをやってくれて、みんなの労をねぎらってくれたんだって。
今日もそれで誘ってくれたのかな。 私も、行っても・・・・・


さん、跡部くんち一緒に行こう」
「あ、うん・・・いいのかな」
「いいんだよ、大丈夫。 クラスの友達全員だから」


隣の席の佐藤さんにそう言われ、嬉しくてほっとした。
同じクラスで良かったなんて、現金なことを思ったり。
人垣の向こうから聞こえる跡部くんの声に、あらためて鼓動が速まるのを感じた。





初めて来た跡部くんのおうち。 広くて広くて、迷子になりそうなほど広いお庭。
その一角に並べられたテーブルには、お菓子やケーキが山のように置かれている。
軽い気持ちで誘ってくれたと思うけど、どれも手の込んだ豪華さだった。

三年生になって日が浅く、まだ話したことのない人もいる。
ケーキを取り分けて、ジュースを注ぎあって、そんな些細なことから、会話が弾み親しくなって行く。
跡部くんはクラス委員でもあるから、もしかして、こういうことも考えていたのかな。



「乾杯」
「あっ、か、乾杯」


グラスが音を立て、私の鼓動が加速を始める。
いつも跡部くんはふいに現れるから、近くにいる時は、注意しておかないと。


「爪は大丈夫そうだな」
「うん、なんとか。 あ、この前は、ありがとう」
「その、Aってのは?」
「え? あっこれは・・・」


乾杯の時、見られちゃったかな。
遠くだとわからないけど、さすがにこれだけ近いと・・・あー、注意が足らなかった。


「どうした?」
「えーと、願掛け、だよ」
「願掛け?」
「試合で、エースが、取れるように・・・・・」


言い逃れ、できるかな・・・跡部くんのイニシャルだなんて、絶対に言えないもの。
どうしよう、誰か来てくれないかな。


「おーい跡部、俺とも乾杯」
「さっきから何回目だよ」
「いいじゃんいいじゃん、友達だろ」
「チッ、てめぇはただ、同じクラスにいたってだけだ」 
「ひでぇな、去年も一緒だったのに」


騒ぎ立てる吉田くんのおかげで、男子が何人か集まって、跡部くんを囲ってしまった。
本心では近くにいたいと思うけど、うまく話せるわけでもないし、さっきのこともあるから、今はそっと離れておこう。


大勢の中にいても、跡部くんはすぐに見つけられる。
ちょっとした声も、わずかに見えた後ろ姿も、その存在感は圧倒的で、ずっと上の方にいる人って思っていたんだ。
そんな跡部くんが、私の爪のことを気にかけてくれるなんて。
つい願掛けなんて言っちゃったけど、本当にエースが取れたらいいな。



「持って帰りたいものがあったら、好きに持ってっていいぞ、箱も袋も用意がある」


跡部くんの声に、みんなが一斉にテーブルへ走り、ちょっとしたバイキング状態。
メイドさんが渡してくれた箱に、綺麗にケーキを並べる佐藤さんが、隣の男子と取り合いになって騒いでいる。
クッキーやマドレーヌを鷲掴みする人もいれば、食べながら物色している人もいた。

私は端の方から手を伸ばし、おいしそうなカスタードパイをひとつお皿に取った。
するとそこへもうひとつ、フルーツタルトが載せられて、もしやと思えばやっぱり・・・・・


「跡部くん・・・」
「遠慮してると逃しちまうぞ」
「あ・・・ありがとう」


跡部くんの指示で、私のお皿はメイドさんの手に渡り、お土産用に箱詰めされた。
わざわざそれを受け取って、私の前に差し出すと、優しく笑ってくれた跡部くん。
今まで私が見て来た跡部くんの中で、一番近くて、一番綺麗で・・・・・息が止まりそうな瞬間だった。


「明日、エースが取れるといいな」
「・・・うん、頑張る、ね」
「勝ったら、お祝いでもしてやろうか」
「っえ」
「ハハハッ、勝つたびに祝ってたらキリがねぇか」


私・・・何を期待してしまったんだろう。
ものすごくびっくりして、ものすごくドキドキして、ものすごく、恥ずかしい・・・・・


「あ・・・跡部くんは、今日みたいなこと、よく・・・」
「まぁ、気晴らしだな、楽しけりゃそれでいい。 だいぶ馴染んだようだしな」
「やっぱり、クラスのこと、気にかけてくれてるんだね」
「同じ教室にいるなら、まとまりがある方がいいだろ」
「そうだね。 みんな、友達だものね」
「ああ」


この時、ちょっとだけ欲が出て、もうひと言付け加えてしまった。


「・・・私も、友達って、思っても」
「ああ。 も、そうだろ?」
「うん・・・」


跡部くんはテーブルの様子を見ていて、私が聞いたことなど、気に留めてはいないよう。
それでも、跡部くんが、私を友達だと思ってくれてること、それが聞けただけで嬉しい。
ただ同じクラスって言われるより、ずっと近くに感じられるから。







朝練の後、また男子テニス部の後ろを歩く。
今日は跡部くんの背中がなく、ちょっと寂しく思っていた。
正レギュラーは、朝練は自由参加って聞いたことがあるから、自主練とかでお休みだったのかもしれない。

予鈴が鳴りやむ時間、教室へ着くと、跡部くんの席に姿がなく、入口で溜息をついてしまう。
人差し指のマニキュアを見れば、綺麗に書けたAのイニシャル。
まさか今日、学校もお休みだなんてことないよね。


「なに突っ立ってんだ」
「わっ」


真後ろから聞こえた声に振り向くと、私以上に驚いた顔の跡部くんがいた。
そうだ私、今「わっ」って変な声出しちゃったんだ。


「脅かす気はなかったが、その声、元気そうで何よりだな」
「あっ、あの、おはよう」
「ああ、おはよう、


フッとこぼれた笑みに鼓動が速くなる。
私の横をすり抜けて、自分の席へ着く跡部くんを、しばらくその場で見つめてしまう。
良かった、お休みじゃなかった。
良かった・・・今日も一日、頑張れる。





女子テニス部の部員は二十四人。
男子みたいに、正レギュラーや準レギュラーなんてランクがあるわけじゃない。
単純にトーナメント形式の試合をして、上位七名がレギュラー、二名が補欠として大会に参加する。
二回勝てばその枠には入れるんだけど、抽選で決まった相手は今のレギュラーで、これまで五戦して一勝しかしたことがない。
その一勝も、三セット目の最後に、相手がミスしてくれたっていう一勝で・・・・・

でも、勝たなきゃ。 どんな一勝でもいい、絶対勝たなきゃ。
跡部くんにも、「勝てよ」って言われたんだもの。



練習の成果は確かにあって、アドバイス通りのスイングも、ボールを思うところへ返してくれた。
手首だけじゃなく、体重をのせるように腰をひねると、スピードの増したボールが、相手の後ろへ抜けて行く。
ノータッチのリターンエース。 こんなの、いつ以来だろう。

第一セットはなんとか取れた。 だけど第二セットに入ってからがしんどくて、ラリーばかりが続くんだ。
粘り勝つのは相手の方で、取っても取っても追いつかれて、自分らしいプレーができない。
気が付けば第二セットが終わっていて、スコアは3-6と分が悪い。 
息を整え、後のない第三セット、走るだけ走って、確実にボールを返して。
意地でも見栄でもなんだっていい、跡部くんに、「勝ったよ」って言いたいんだ。



「ゲームセット・アンド・マッチ  6-4 3-6 7-5」


息のあがったままコートを出て、崩れるようにフェンス前に座り込む。
ぼんやりと目に入るラケット、水色のグリップに、赤い模様・・・・・あっ、もしかして。
人差し指を見れば、爪の先が割れ、滲んだ血が固まっている。
塗っていたマニキュアもところどころ剥がれ、Aのイニシャルにもひびが入っていた。
せっかく、エースが取れたのに・・・一度しか使えない、魔法みたいだね。

一試合目は勝てた・・・・・だけど、もう一試合、いけるかな。
次で勝たなきゃ意味がない。 レギュラーにはなれないんだから。


テーピングで爪を固定して、なんとかもう一試合、後先考えずコートを走った。
打ち返すたび痛みがあったけど、指を見たらもっと痛くなりそうで、ネットの向こうを睨みながら、ひたすらボールを打っていた。





流しっぱなしの水が、指先をつたっていく。
冷たさで麻痺した感覚、なのに痛みだけは消えてくれない。
勝っていたら、これぐらいなんてことないのに・・・・・



「っ」


声でわかる・・・跡部くんだ・・・・・
顔だけそっと横へ向けると、見慣れたジャージ姿で立っていた。


「痛むのか」
「・・・・・勝てなかった」
「・・・ああ」
「勝ちたかったのに・・・なんで、こんなに弱いんだろう・・・・・」


言葉にしたことで、自分の弱さを一層感じる。
誰よりも強い跡部くんの前で、中途半端な、どうしようもない弱さに涙が出た。
部内の試合で、たった二つ勝つこともできないなんて。


蛇口を止めた跡部くんが、私の手を取り、自分のハンカチで包んでくれた。
指先にはまだ血が滲み、汚してしまうからと、手を引こうとしたけれど。
跡部くんは私の手首を掴んだままで、まっすぐに見られ、動くことができなかった。


「弱けりゃ、強くなりゃいい。 結果は大事だが、今の弱さだけに囚われるな」
「・・・・・」
「あのエースは、最高の出来だった」
「っ、あれは、跡部くんが、アドバイスしてくれたから・・・だから・・・」
「打ったのはお前だろ。 願掛けなんかしなくとも、お前はいつでも打てるようになってるさ」


願掛け・・・・・この爪のAは、エースじゃない。
跡部くんの、エーなんだよ。
私がこれを書いたのは、励みになると思って・・・跡部くんに、力を貸して欲しかったからなんだ。



「・・・これは・・・願掛けじゃ、ないんだ。 イニシャルなの。 エースじゃ、ないの」
「イニシャル?」
「うん・・・・・」
「・・・お前の、好きなヤツか?」
「っ・・・・・」
「・・・フッ・・・そうか、なら、俺の可能性はゼロってことだ。 友達ってだけの、俺は」


まだ掴まれたままの手に感覚が戻ってくる。 
跡部くんの体温と、その指の強さまで、こんなにハッキリ、大好きな人の手を感じているのに・・・・・


「跡部くん・・・私・・・・・」
「俺がお前にアドバイスしたのも、爪を研いでやったのも、昨日、クラス全員にかこつけて家に呼んだのも、友達だからと思ってたんだろ?」
「・・・え」
「そう思うなら、今ここでやめてやる」


跡部くんが・・・怒ってる?
いつも優しくしてくれたのに、こんな顔見るの、初めて。
やめてやる、って・・・友達で、いてくれないってこと? そんなの、そんなの、寂しすぎる。


「ごめんなさい・・・私、してもらうばっかりで・・・跡部くんといるの、嬉しくて・・・このAは・・・跡部くんの、Aなんだ」

「勝手に、ごめんなさい・・・・・」



涙がボロボロこぼれて、もう何も喋れなかった。
跡部くんに嫌われたくない、友達でいたい、そればかり考えて。
跡部くんが言いたかったことを、私はぜんぜんわかっていなかった。


私の手首を掴んでいた跡部くんの手がほどけ、背中に回ったかと思うと、押されるように前へ出る。
跡部くんの肩に、鼻先が当たった。
背中を支える腕に力が入り、私の身体は、跡部くんのジャージとぴったり重なっていた。


「ハンカチ、使っちまったからな・・・・・」
「あ、跡部くん・・・・・」
「Aの付く名前、いないと思ってたのか?」
「え・・・」
「俺なら、Kだろ」
「・・・そんな、こと」
「いっそ、跡部景吾と書いておいてくれ」
「・・・・・」


そんな、はっきりとなんて、恥ずかしくて書けないよ。
下の名前は、口にするのもドキドキするんだから。
たけど、今はもっと、もっとドキドキする・・・・・


「お前は、欠点を言っただけで、フォームをあらため、克服しちまった。 成長は遅くとも、確実に上達する、それを見せられて、俺はまた口を出した」
「・・・跡部くん」
「勝たせたかったんだ。 お前以上に、そう思っていた」
「・・・・・」
「朝練の後、いつも後ろにいるお前を気にしてた」
「・・・跡部くんが・・・気にしてくれたの?」
「フッ・・・好きなら、気にするだろ」
「え・・・・・」
「さっきは、取り乱して悪かったな」
「んーん」
「もう・・・友達には、戻らないぞ」


そう言った跡部くんの腕が、強く私を抱きしめた。
びっくりして止まった涙。 何が起きているのか、まだ理解できていなくて。
いつもの優しい顔が見えたかと思えば、ぶつかりそうなほど近づいて。

あっ・・・・・くち、びる、に・・・・・これって・・・・・ぶつかったわけじゃない・・・・・


「あ、の・・・・・」
「その爪、見てやるから来いよ」
「う、ん・・・・・」







保健室へ寄って、手当をしてくれた跡部くん。
部室から持ってきてくれた除光液で、丁寧にマニキュアを落とし、消毒もしてくれる。
爪を保護するため、小さく切ったテープを貼り、上からまたマニキュアでコーティング。
その出来栄えに微笑んだ跡部くんは、私の手を取ったまま、しばらく指先を見つめていた。


、テニスは続けるんだろ?」
「うん、明日からまた練習する。 高等部で、レギュラーを狙うんだ」
「そうだな、頑張れよ」
「うん。 あの、跡部くん・・・」
「ん?」
「レギュラー取れたら、お祝いしてくれる?」
「ああ。 だが、友達は呼ばねぇぞ。 二人だけでだ」
「あ、うん・・・ありがとう、頑張るね」


初めて、跡部くんと一緒に帰った。
初めて手を繋いで、初めてこんなに沢山話をして。
「ずっと好きだった」と、初めて聞かされた。





「えっ」
「呼びたくて呼んだだけだ」
「あ・・・・・」
「お前も、呼んでいいんだぜ?」


繋いでいた手を持ち上げ、人差し指を私に見せる跡部くん。
さっきの保健室で、マニキュアを塗る前に、テープにKの文字を書いちゃったんだ。
跡部くんてば、マジックでだよ。


「あ・・・それは・・・まだ・・・・・」
「なら、明日からにするか」


笑顔の跡部くんに、何か言い返すこともできず、明日の私はどうしてるんだろうって心配にもなったけど。
繋いだ手が、私に力を与えてくれる。 こんな日が来るなんて、考えたこともなかったんだ。
 

明日、朝練が終わったら、跡部くんの背中に声を掛けてみようかな。
きっとまだ、「跡部くん」としか呼べないけれど、友達のそれより、違うドキドキが待っているはずだから。